COLUMN 住まいのコラム
Q.床下暖房の採用は可能ですか?
Q.床下暖房の採用は可能ですか?
A.床下暖房は検討の上、不採用といたしました!
その不採用とした理由
過去、実際にご採用されているお宅様(他社で建築なさった方)にて体験をさせていただいたことがあります。
そして省エネ性やメリットデメリットなどを社内で検討しが結果、以下の6つのマイナスポイントを理由に、モコハウスでは必要ないという結論に至っています。
弊社が考える、床下エアコンの6つのマイナスポイント
※あくまでもモコハウスが考えるマイナスポイントです。
1. 居住スペースに近い位置にエアコンが設置されることからか、エアコンの吹き出し音がうるさく感じた。
2. 夏場は活用しない上に移動ができず、家具置き場など使い勝手が制限される可能性がある。
3. 設置場所の関係でエアコン自身の保証が効かない。
4. 開放的な基礎にするために基礎の形状を変える必要があり、地中梁などで補強するなどのコストが掛かる。
5. 各所に床用の大きな給気ガラリが必要になる。
6.床下を温めるために消費するエネルギーは、単純に、室内側に付加する方が省エネになる。
以下では、どのような建物が床下暖房(床暖房)が有効とされるのか、モコハウスが考える理由をご紹介します。
少々、遠回りなお話ですが、お付き合いください。
冬場、なぜ足元(下部)が冷えるのか?
冬場、なぜ足元が冷えるのか?当たり前のこと、という感じかもしれませんが、少し専門的にお話をさせていただきます。
断熱性能のレベルの問題
断熱性能とは、屋外と建物の室内側を隔てている外皮(断熱層)性能のことを表しています。
外皮とは、基礎断熱の場合は基礎部分、床断熱の場合は床部分、そして外壁、屋根、窓、玄関ドアなどのことで、断熱性能が数値化できる部分のことで、総合的な性能は外皮熱還流率(UA値、単位W/㎡・K)で表されます。
👉モコハウスが思う最低限必要な断熱性能は、実証及び経験上、外皮熱還流率(UA値)0.35W/㎡・K以上を想定しています。
気密性能のレベルの問題
気密性能とは、机上で計算する断熱性能とは違って実測して求める点が大きく違います。
気密性能は、相当隙間面積:C値(単位:c㎡/㎡)で表されますが、施工で意図せず出来てしまった隙間の総面積を建物の実質床面積で除して数値化されたものです。
👉モコハウスが思う最低限必要な気密性能:C値は、0.2c㎡/㎡以上を想定しています。ちなみに、モコハウスの令和3年度の実績は、全棟0.1c㎡/㎡でした。
24時間換気システムによる熱損失の問題
現在、建物の室内側の空気は、24時間かつ2時間に1回、換気により入れ換えることが建築基準法で求められています。24時間換気システムには様々な様式がありますが、建物内の空気と屋外の空気を直接入れ換えるものですから、採用されるシステムにより大きな影響がでるケースがあります。
👉モコハウスが採用する換気システムは、全熱交換型(熱交換率90%)換気システムを採用しています。
では、上記の3つの問題点が、熱効率という観点からレベルの低い建物だった場合、どのような現象が起きるのか、お話させていただきます。
1.熱伝達によってダウンドラフトが発生する
外皮の断熱性能が低い場合、建物の内壁(外壁側)、屋根または天井、窓や玄関ドアなどの室内側の表面温度が室内の空気温度より低い場合、表面に抵触している空気は熱伝達によりに壁や天井や窓などに熱を奪われ、その結果、空気の分子密度が大きくなり、重くなって下降流となります。
その結果、足元がスース―して寒さを感じることになります。この現象をダウンドラフト現象と呼びます。
2.隙間風によってダウンドラフトが発生する
隙間風は、直接、建物内に進入する外気のことをいいます。
言うまでもありませんが、もし外気が0℃であれば0℃の空気が、直接、室内に入ってきます。
仮に、外気と同じく室内側の空気温度が0℃であれば、温度差がないことから理論的には下降流は起きないのですが、一般的に、暖房を掛けたりして外気より室内の空気温度の方が高いことがほとんでですので、その温度差から周りの空気より重い隙間風(密度が大きい)は下降流となって足元を流れたり溜まることになります。
3.輻射熱の影響で体温が奪われる
冷たい窓や壁に近づくと、冷気を感じたり、底冷えするような寒さを感じることがあると思います。
この現象は「熱は高い方から低い方に流れる」という基本原理によるものですが、体温よりも冷たい窓や壁が、触れることなく人の熱(輻射熱)を奪ってしまうことが要因です。
この現象を冷輻射と言ったりします。
外皮部分の断熱性能のレベルによって、冷輻射の影響の大小が決まることになります。
4.24時間の換気システムによる影響
現在の建築基準に基づく換気量を確保した場合、仮に、外皮(断熱層)の内側の体積が300㎡の建物であれば、1時間あたりに150㎥の温めた空気を排気して、同時に150㎥の外気を、直接、取り入れることになります。
冬場、外気が0℃で建物内の空気温度が20℃であれば、2時間に一回、建物内の20℃の空気を排気して、0℃の空気を取りれるということになりますから、温熱環境的に大きな影響があることは想像いただけると思います。
選択によっては人為的にダウンドラフト現象を生じさせる可能性がありますので、換気システムもしっかりと勉強いただく必要があります。
次に、床下暖房(床暖房)があった方が快適に感じる家とは
上記の4項目の点で、配慮が少ない建物の場合、頭部(上部)の方が暖まるだけで、足元(建物の下部)が寒くなり不快指数が高くなることになります。このような現象が起きやすい建物であれば、足元から熱を付加し続けるとことで、上下の温度差が比較的できにくくなるため、個室に限定される場合が多いですが、結果、快適に感じる家になり易いといえます。
一方、床下暖房(床暖房も含めて)がなくても良い家とは
お分かりだと思いますが、単純に、上記4項目の現象がほとんど起きない高性能な建物にすることです。
断熱性能を高めて、建物の気密性能をきっちりと確保して、24時間換気システムでは室内の空気と共に熱を排気するだけではなく効率よく熱回収する方式を採用すれば、ダウンドラフト現象や冷輻射もほとんどなくなり、床下暖房(床暖房)がなくても上下の温度差がほとんどできない快適な住まいになります。
結果、複雑なことをする必要がなくなります。
以上のことから、モコハウスには床下暖房(床暖房)は必要がないという結論にいたっています。
今回も、長文をお読みいただき有難うございました。
補足:エアコン1台でつくる温熱環境(冬)のご紹介
兵庫県川西市にある多田モデルハウス(UA値0.22W/㎡・K、C値0.1c㎡/㎡)での真冬の実測値をご紹介します。
14帖用エアコン(定格冷房能力4.0KW)1台、温度設定22℃、風量自動で全館暖房中のデーターです。
人は住んでおりませんので、熱源はエアコン1台のみ、その他の熱源がない状態です。
人が住んでいると、人を含めて沢山の熱源がありますので、もっと温度環境は安定することになります。
令和4年2月25日の午前6時ごろに、外気温度は最低気温マイナス4.9℃まで低下した日のデーターになります。
そのタイミングのときの室内の温度は、1階リビングが21.5℃、2階ファミリースペースが21.9℃でした。
1階と2階の温度差は0.4℃です。
エアコン1台で、全館、設定温度とほとんど変わらない温熱環境を保ち、日中にはエアコンの温度設定を超えることが多い毎日となります。
このレベルの建物になると、コールドドラフト現象や隙間風などを感じることは皆無と言っても過言ではないレベルで、天井や壁面、そして床面までも室内の空気温度とほぼ同じになります。
👉参考:最低気温を記録した2月25日午前6時ごろの温度条件で、リビングの床面表面温度を計算すると、20.5℃(株式会社キャットテックラボ、熱通過と表面温度のシュミレーションにて計算)になります。ちなみにこの計算は、常時、外気温度がマイナス4.9 ℃が継続していることが条件となる計算です。