COLUMN 住まいのコラム
エアコン1台で全館冷暖房の意味と種類について
皆さん、こんにちは。
モコハウスは、兵庫県・大阪府を中心に、超高断熱高気密住宅の注文住宅に取り組んで30年以上、本当に快適な住まいをご提供することが使命と考える建築会社です。
今回は、モコハウスも採用する、また、他社様のHPのタイトルでもよく見かける「エアコン1台で全館冷暖房」について、モコハウスが考える意味と種類についてお話したいと思います。ご興味のある方は、ご一読ください。
最も大切にしていること!「シンプルが良い」
最初に、モコハウスが最も大切にしていることは、「シンプルに快適な温熱環境が保てること」です。
構造躯体で工夫(壁を2重にするなど)したり、様々な設備機器を設置(ダクトで送風するなど)したり、コストを掛けて、結果、複雑な建物にはしたくないという考えがあります。
モコハウスでは、真夏も真冬もシンプルに「壁掛けエアコン」だけで、年中、快適に過ごしていただける住まいづくりを目指しています。またその為に、最高水準の断熱性能と気密性能が必要だと考えています。
モコハウスが考える「エアコン1台」の意味
えっそうなんですか・・という声が聞こえてきそうですが、建物の中に、エアコンを1台だけにすることが目的ではありません。
実際に、モコハウスにお住いのオーナー様宅では、冬用と夏用の2台を設置いただくことを基本としています。
冬用は2階に設置、夏用は1階に設置するという考え方です。
ただ、2階のエアコン1台で、夏も冬も快適にお過ごしいただいているオーナー様がいらっしゃることは事実です。
季節ごとに1台で全館冷暖房できるということ。
そしてもうひとつは、エアコン1台分の「能力」で全館冷暖房できるという意味があります。
上記の「エアコン1台分の能力」の根拠になる計算は、以下の通りです。
ここでは、エアコンのエネルギー消費量が大きな冬場に、全館暖房する為に必要となる熱量を計算します。
条件設定
建物の規模:床面積120㎡の2階建、外皮面積300㎡、体積300㎡
季節は冬場:外気温度-3℃、室内温度22℃と温度差25℃
外皮熱還流率0.25W/㎡・K(R3年、モコハウスの平均)
A)エアコンの必要熱容量の計算
建物内外の温度差が25℃あるときに、室内の熱が屋外に外皮を通じて流出する熱量の計算
外皮熱還流率0.25W/㎡・K×外皮面積300㎡×温度差25℃
∴1,875W(ここでは、小数点以下四捨五入、以下同様)
B)24時間の換気システムによる熱損失の計算
体積300㎡/2×空気の容積比熱0.35W×温度差25℃×0.3(温度交換率70%で計算)
∴394W
※カタログ値では温度交換率90%ですが、ここでは効率を下げて70%で計算
C)1時間あたりに、建物から失われる熱量の合計
A)+B)2,269W
上記の計算から、建物から失われる熱量2,269Wを建物内のエアコンで補填すれば、建物内外の温度差25℃をつくることができるということになります。
そこで、必要な熱容量だけでみると、おおよそ6畳用の壁掛けエアコン1台の能力があれば全館暖房が可能ということになります。
ただし、6畳用のエアコンをマックスで使い続けることになりますので、現実的には余裕をもって空調できるように、少し大きめのエアコンをお勧めすることになります。
モコハウスの「エアコン1台で全館冷暖房」とは、以上のように季節ごとに1台、そして必要熱容量はエアコン1台分ということなのです。
エアコン室を設置して、「エアコン1台のみ」でダクトと送風ファンを使い必要箇所に送風するという仕組みではないことをご理解いただければと思います。
24時間換気システムとの相性
モコハウスが採用する24時間換気システムは、株式会社マーベックス社製の「全熱交換型第一種換気システム」です。
この換気システムの優れているところ、またシンプルに壁掛けエアコンだけで全館空調するモコハウスと相性が良いところは、各居室はもちろんですが、クローゼット、パントリー、押し入れなど、そして洗面やトイレに至るまで排気口が設置され、その排気口に向かって空調された新鮮な空気が流れます。その結果、建物の隅々まで空調された空気が行き渡ることになります。
排気すべき個室など空気は、その空間内で排気され、しかも床面から排気する方式のため埃を舞い上げず、かつ排気口のフィルタでキャッチすることから室内の埃が少なくなるメリットもあります。
一方、エアコン室を設けてダクト送風する多くは、各居室の床や天井から空調した空気を送り込み、トイレなどのにおいの発生源になりやすい空間の天井から集中して排気するようなシステムです。
このシステムの場合、居室やその他の室内空間のすべての空気は、トイレにある場合、トイレに向けて排気するべき空気が流れ、それと共に埃なども巻き上げながらトイレから排出することになります。
この両者の空気の流れは全く逆で、空調された新鮮な空気がパブリックスペースから各居室や物入等に流れるのか、一方、各居室からパブリックスペースに流れるのかの違いがあります。
エアコンを2台以上使うことはないの?
2台以上を同時可動させることはあり得ます。
例えば、1階と2階が階段だけでつながっているようなケース、また、2階リビングで寝室や子供部屋などが1階の場合などです。
ただ、熱容量的にはエアコン1台分に変わりはありません。
全館、エアコン1台分のエネルギーで適温をつくることができますので、2台使ったとしても必要なエネルギー×2ということではないということです。
また、夏場に直射光が入りやすい個室の場合、冷気の流入以上に取得熱量の方が大きくなることが、時々、起こります。
その場合は、扇風機やサーキュレーターを利用したりされる方も居られ、また、過去に数件ですが、ご入居後に壁掛けエアコンを個室に追加設置されたオーナー様がいらっしゃいます。
その方の感じ方にもよりますが、このような可能性はゼロではありません。
このお話をすると、個別にダクトで冷気を送れば良いのでは?というご質問に繋がる場合もありますが、ダクト方式でも個別で送風量を増やしたり温度を下げたりすることは不得意ですので、大差ないことなのです。
ケースバイケースですが、やはりシンプルが良い!
ここまでのお話でお分かりだと思いますが、すべての条件をクリアするということは難しいことといえます。
ただ、構造躯体や沢山の設備機器で複雑なものになるよりも、建物の基本的性能をしっかりと確保して、構造躯体も設備機器もできる限りシンプルにしておけば、必要以上のコストを掛けず、またメンテナンスも簡単にできる、長い目でみて住みやすく快適な住まいになると考える次第です。
最後に、モコハウスはご縁のある皆さまに必ずご満足いただけるよう「本当に快適な住まいづくり」を目指して、これからも真摯に取り組んで参ります。
今回も、最後までお読みいただき有難うございます。