COLUMN 住まいのコラム
「断熱等級の新設」大切な視点!
断熱等級6・7の新設
日本の断熱基準が、今年の10月から飛躍的に高まる予定です。
今年の4月に断熱等級5(UA値0.6W/㎡・K、ZEH基準と同じ)が新設されたばかりですが、矢継ぎ早に断熱等級が7まで高められることが決定しています。
断熱等級の認定は外皮熱還流率(UA値)を基準としていますが、新設される等級7ではUA値0.26W/㎡・K(断熱地域区分:6地域)になります。
👉モコハウスのUA値0.25W/㎡・K(令和3年度の平均値)
20年以上使われてきた断熱等級4(同じく6地域)がUA値0.87W/㎡・Kでしたので、日本政府の脱炭素社会への相当の意気込みが感じられます。
ちなみに、UA値とは建物から逃げていく熱量を表しますので、小さいほど断熱性能が良いことになります。
断熱等級7が目指すもの
断熱等級7をクリアした建物は、断熱等級4レベルの建物と比較して、冷暖房一時消費エネルギー消費量が40%程度削減できるとされ、また、一定の条件の基に室内温度が15℃を下回らない建物とされています。
実際の建物で表現すると
上記の断熱等級4と断熱等級7の違いを、冬場の建物で表現すると、以下のようになります。
※日射取得や電化製品、そして人が出す熱量等は考慮せず。
【条件設定】
建物面積110㎡(33.27坪)、建物の外皮面積300㎡
冬場:外気温度0℃、室内温度22℃
断熱等級4、UA値0.87W/㎡・Kの場合
建物から失う熱量は、
0.87W/㎡・K×300㎡×22℃(温度差)∴5742W
断熱等級7、UA値0.26W/㎡・Kの場合
建物から失う熱量
0.26W/㎡・K×300㎡×22℃(温度差)∴1716W
この数字が、建物の全体(外皮:屋根、壁、窓、基礎など)から失う熱量です。
この数値が小さくなればなるほど、冬場であれば外皮(屋根、壁、窓など)に接する空気の熱が奪われにくいことから下降流が小さくなり熱の対流が起きにくく、足元がスース―したり上下の温度差が生れにくく、また内装から受ける輻射熱も安定していることから建物全体の温度差が少ない、体感的にも快適な空間をつくることができます。
現実的には計算通りにはいかない
一方、計算通りにはいかない根拠として、ふたつの考慮すべき点があります。
ひとつ目は、気密性能(相当隙間面積:C値)
隙間が多いと、建物内外の温度差や気圧差によって、直接、冬場であれば暖められた室内の空気が排気され、冷たい外気が流入することになります。
仮に、隙間から100㎥(C値3.0c㎡/㎡、風速4m、建物内外の温度差20℃で凡その想定)の漏気があった場合、直接的に室内外の空気が入れ替わりますので、建物内外の温度差が22℃だった場合で770W(計算式:100㎡×0.35W×22℃)の損失となります。
👉モコハウスのC値0.1c㎡/㎡(令和3年度の全棟の実測値)
もうひとつは、24時間の換気システム
24時間、基本的には2時間に1回、建物内の空気が外気と入れ替えることが定めれています。
建物の気積が300㎥であれば、その半分の150㎥が1時間ごとに入れ替わることになります。
仮に、建物内外の温度差が22℃だった場合で、また直接、建物内外の空気を入れ替えるとした場合、1,155W(計算式:150㎥×0.35W/㎥×22℃)の損失となります。
この両者の熱損失を合計すると、1.925Wとなりますので、このような条件が揃った場合のことですが、断熱等級7の意味が全くなくなります。
👉モコハウスでは、24時間全熱交換型換気システム(熱交換率90%)を採用
大切な視点
上記でご紹介したように、最高クラスの断熱等級の認定を受けているから必ず想定された性能が保証されるものではないことはお分かりいただけたと思います。
断熱等級(外皮熱還流率:C値)と併せて、気密性能(隙間風等による漏気)と24時間換気システムによる熱損失にも注目して、お考えいただくことがポイントになります。
最後に、最も大切なことですが、
断熱性能や気密性能を高める目的は、省エネ住宅にすることが最大の目的ではないということです。
外皮部分の断熱性能を高めれば高めるほど、熱影響による温度差ができにくくなりますので、建物全体の温度差が小さくなり温度コントロールが小さなエネルギーで可能となります。
居室は言うまでもありませんが、玄関ホールやローか、トイレ、洗面脱衣、浴室に至るまでどこでもいつでも快適に、健康的に暮らしていただける住まいにすることが最も大切な視点だと考えています。