
住宅の省エネルギー化と躯体外皮の断熱化
住宅の外皮の断熱化による熱ロスの削減化は、住宅の省エネルギー化に対する建築主の判断基準として重要な項目です。ここでは、暖房や冷房設備から発生する温熱や冷熱に対する熱ロスの低減とはどういうことなのかご紹介します。
「外皮全体からの損失熱量(W)」と「計画換気による損失熱量(W)」
日本の家は暖房や冷房運転をしても「冬は寒く、夏は暑い」といわれます。また、「暖房を止めると部屋が直ぐに寒くなり、あるいは冷房を止めると部屋が直ぐに暑くなる。」ともいわれ、暖冷房の効き難い家のつくり方をしています。
そこで熱を逃がし難くすれば、単に住宅の保温性能の向上にみならず、多くの付加価値が生まれることになります。従って、住宅のつくりかたを見直し外皮の断熱性能を高めれば、暖冷房運転費も安くなり、生活に豊かさが生まれることになります。
熱損失係数:Q値(W/㎡K)
暖房や冷房の熱を逃げる量を計算する仕組みを習得する必要があり、その計算の根拠となるものに熱損失係数:Q値(W/㎡K)があります。
熱損失係数は、室内外の温度差1K(=1℃)当たり、床面積1㎡当たりの損失熱量W(ワット)と表します。
損失熱量の計算対象は、「外皮全体からの損失熱量(W)」と「計画換気による損失熱量(W)」です。そして、これらの合計を述べ床面積(㎡)で割り算した答えが熱損失係数:Q値(W/㎡K)となります。
外皮からの熱損失量の計算
1)暖房時には、熱は「家の中から外へ向けて」失われ、失われる熱量を熱損失量として表現します。
2)熱損失量は、温度差の大きさに比例します。
3)それゆえ、その計画される家に設置する暖冷房設備の容量をもとめるときには、「外気気温」と「設定室温」を決め、「室内外の気温差(K)」を決定すればよいのです。
4)熱損失量の計算は、「外皮の断熱部位ごとに、断熱施工面積1㎡当たり何ワット」失われたのか?とう計算を行います。
5)そして、その部位の全断熱施工面積(㎡)で掛け算をすれば、その部位全体からの失われる熱量が分かります。
4部位の外皮
屋根部位、外壁部位、床部位、開口部位
熱損失量(W/㎡)を求める計算式は次の通りです。
熱損失量=家の中と外の温度差(K)÷各外皮の断熱抵抗値(㎡K/W)
整理すると(W/㎡)となり、その単位の意味は、断熱施工面積1㎡あたりの熱損失量(何W)という答えが求められます。
換気による熱損失量
換気は、住む家族の員数から、「室内の炭酸ガス濃度1000ppm以下」を満たす換気量を求めて計算しますが、ちなみに、長期優良住宅やエコポイント30万円取得のための提出資料として「建築主の判断基準である熱損失係数を算出する場合は、計画換気量を0.5回/時間として計算」すれば良いことになっています。
温度差1Kに対する住宅全体からの熱損失量(W)は、外皮からの損失熱量(W/㎡K)+換気による熱損失量(W/㎡K)÷述べ床面積(㎡)となり、Q値の単位は(W㎡K)となります。
参考
ただし上記にある計画換気量0.5回/時間とは、C値(相当隙間面積)がゼロ(全く隙間の無い家)の場合を想定しています。
1999年の次世代省エネ基準でのⅣ地域ではC値(相当隙間面積)の認定基準を5c㎡/㎡以下していますが、仮にC値を5c㎡/㎡、平均風速を4m/秒(日本の平均風速)で想定した場合、0.5回/時間自然換気していることに相当します。
そこで、計画換気との合計1回/時間換気している計算になることから、長期優良住宅やエコポイントを取得できる住宅といえども、実際は、計算に見合った性能を有しない建物が多いといえます。
ちなみにモコハウスのC値(相当隙間面積)は、基準値の50分の1程度の約0.1c㎡/㎡であることから、自然換気量を無視できるレベルにあるといえます。
各部位の熱損失量の低減と換気による熱損失量のコントロールが大切
大切なことは、各外皮の断熱性能を高め、国から決められた数値を盲目的に信じるのではなく、実際の換気量に基づく換気による熱損失量を想定し、住まいづくりを行うことです。